今週のイベントタイトル
今週のイベント
イベントカレンダー
マイページ
小説タイトル画像

第8話:秋 仕事編

大寒波で50年ぶりの雪が舞い散る東京。すこしだけロマンチックな気分になりながら、誠二は東名高速道路を走らせる。

小山町に到着したのは午後七時過ぎだった。

いつもは暗闇の中にポツポツと明かりが目立つ風景が、どこかの風景画を思わせる白銀世界となっていた。空は晴れて、東京ではお目にかかれないくらいの星々が瞬いている。

誠二は由梨奈の家の駐車場に停めて、助手席に置いてある誕生日プレゼントとケーキを持った。サプライズなんて柄じゃないな。少し心臓が痒くなるような脈が流れる。

「いらっしゃい」玄関を開けると、さっそく由梨奈の母親が出迎えてくれた。

「由梨奈、なんと誠二さんがきてくれたわよ」

居間の扉を開けると、父親と由梨奈と弟の雄平が食卓を囲んでいた。

「え! 誠二、どうして?」由梨奈は何も知らなかったようで、すごく驚いていた。

「由梨奈を驚かせようと思ってさ。誕生日おめでとう。これがケーキで、これが誕生日プレゼント」

「えっ、本当? うれしい、ありがとう!」

「さぁ、誠二さんも座って、一緒にご飯を食べましょう」

由梨奈は喜々としてプレゼントの包装を開ける。

「すごい! ネックレス! うわぁ、うれしい! 似合う?」

「いいね、似合うよ」

 

それから誠二は由梨奈の家族と夕食をとり、ケーキを食べて団欒した。

夜が更けて、時計を見ると十一時だった。

「やばっ、俺、そろそろ帰るわ」と誠二が言った。

「え、今から帰るの? 泊まっていけばいいじゃん」

「いや、そういうわけにもいかないだろ。明日会社だし」

「誠二さん、今日くらい泊まっていけばいいじゃない」と洗い物を終えた母親が言う。「今日は道路が凍ってるから危ないわよ。」

「その方がいいよ、誠二君。それにきっと明日は混むだろうから、新宿まで直通の高速バスで行ったらどうだ? バス停まで送っていくから」と父親も言う。

誠二も内心は今から帰るのは辛いなと思っていた。せっかくの好意を無駄にするわけにもいかないし、しかも明日は金曜日。多少一日無理をしてもなんとかなるだろう。

「わかりました。ありがたく泊まらせていただきます」

由梨奈を見遣ると、愛くるしい笑顔で返してきた。今日は幸せな日だなと思った。